福岡高等裁判所 昭和24年(つ)1006号 判決 1950年2月16日
被告人
石田雲平
主文
本件控訴を棄却する。
理由
弁護人本田正臣の控訴趣意は末尾添付の書面記載のとおりである。
控訴趣意第一点について。
しかし、本件訴訟記録を通覽し原審の取り調べの経過に徴するときは弁護人から原審公判廷で被告人に精神上欠陷があるため、正常判断を爲し得ない事実の立証として医師の被告人に対する病状証明書(被第二号を提出しているが右は被告人が刑法第三十九條第二項に所謂心神耗弱者なりとして刑の法定減軽を主張する趣意ではなく單に情状として斟酌を受け度き趣意であつたことが推測できるのであるから、判文上に特に右の判断を示す必要はない。從つて原判決に法令適用の誤り又は判断遺脱の違法があるとは云えない。却つて原判決に現われた犯罪事実、前科の点刑の量定を考え合せる時、原審は被告人の敍上の病状を十分汲み取つたものと思えるのである。右の次第で論旨は理由がない。
控訴趣意第二点について。
しかし、本件記録全般を檢討し本件の主観的及客観的諸事情を勘考するも、原審の刑の量定を不当と思料すべき事由が見出されないので論旨は理由がない。
他に原判決を破棄すべき事由もないので、刑事訴訟法第三百九十六條に從い主文のように判決する。